忍者ブログ

[PR]

2025年05月05日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

SS(zill O'll その1)

2015年11月06日
PSPでDLプレイしてたらモヤモヤと最熱しました……。誰もみていないだろうとまたも別ジャンルですみまs(ry
支部に移転したら消します。

ぼちぼち(何年越しだよという感じですが)リクも進めていたりするのですが、UPできるのはいつになるのか……本当にすみません;


◾︎ご注意
以下、別ジャンルのSSです。しかも長編という完全自己満足です……。
過去サイトからの加筆修正+トリニティは未プレイなので好き勝手。
一応カプは、アンギルダン←始まり女主←ゼネテス。やっぱり赤様大好きだ……!


何処か遠くで、水の滴り落ちる音が聞こえる。
それは、まるで音楽を奏でているかのような、美しい音色にも聞こえる。

――ワタシヲ、ワスレナイデ――

涙が、零れた。


■You have my word.(1)■


王都・ロストール。
竜殺しの称号を持ち、今やバイアシオン大陸屈指の冒険者となったジルは、元・ディンガル帝国朱雀将軍赤い巨星ことアンギルダンと行動を共にしていた。
「お爺ちゃん、お仕事あった?」
仕事探しは人に任せて酒場で茶を啜っていたジルに、アンギルダンはやれやれと肩を竦める。腹が立つどころか、笑みがこぼれるくらいには重症だ。
「城塞都市跡へ、セレネーという行方不明になった女性の捜索じゃ」
「早速出発ー!」
「しばし待て、ジル」
勇み足で歩き出したジルの首元を捕まえるアンギルダン。
「どしたの、お爺ちゃん。ぎっくり腰?」
「違わい。実は、この仕事を一緒にしたいという奴がおっての」
アンギルダンは顎に手を当て、瞳を細める。愉快そうなその様に、聡い彼女はピンときた。
「まさか……」
「よお!」
と、ジルは後ろから頭を軽く叩かれた。驚き振り返る彼女の瞳が、見知った顔を映し出す。
「ゼネテス!」
「元気してたかい、ジル?」
「っくりしたあ! 相変わらず自由人ねえー」
「あれから3年経ったし、復興もほぼ完了してる。そろそろ俺が居なくても大丈夫だろ」
「レム兄たちも居るしね」
ゼネテス出番ないじゃん、ジルは笑った。

3年前、このロストールでは大規模なクーデターが行われた。
その首謀者は、ジルの義兄・レムオン。
レムオンは当時政権を掌握していた王妃・エリスに反感を持つ貴族たちを纏め上げ、軍隊が帝国軍と衝突している隙をつき、ついにエリスを暗殺せしめた。
この事件の裏には、虚無の子シャリや闇の王女となったティアナ――闇の力が働いていたのだが、事実を知るのはごく一部の人間だけである。
この事件は、多くの人に多くの悲しみと傷跡を残した。
ゼネテスは愛する者を失い、ジルはティアナを救えなかった。
王都に住む者は皆、今一様に傷を乗り越えようとしている所なのである。

――4日後。
一行は無事、城塞都市跡に辿り着いた。かつては賑やかであったであろうそこは、今や魔物達の巣窟と化している。にも関わらず行方不明者の捜索の依頼が絶えないのは、財宝が数多く眠っているからだろう。
「でも、変なのよねぇ」
「何がだよ?」
「なんかさ、いつもと雰囲気違くない?」
どこが違うのかって聞かれても答えられないんだけど、と彼女は付け足す。
その時は気のせいだろうとやり過ごしたが、奥に進むにつれ、彼女が言った違和感をアンギルダンとゼネテスの二人も感じ始める。
幾多の修羅場を潜り抜けてきた体が、肌で感じる奇妙な空気。だが、正体は掴めない。
「ね、おじいちゃん。ここの柱壊れてなかった?」
ふむ、とアンギルダンが頷く。
「違いない」
「何でそんな事覚えてるんだよ、とっつあん。気のせいじゃないのかい?」
壊れた柱なんていっぱいあるぞ、肩を竦めるゼネテスに、アンギルダンは豪快に笑って答えた。
「はっはっは! 何を隠そうその柱を壊したのは他でもない、わしじゃからな」
アンギルダンの話では、魔物退治の際に勢いあまって壊してしまったという事だった。
「でもまあ、もう時効じゃよ、時効」
「時効? 時効って、いつの話だ?」
「そうじゃのう……15年は前の話か」
「それじゃ、俺たちは時間を越えたってのかい? めったに出来る経験じゃないぜ、それは」
ゼネテスは笑ったが、思ったよりも乾いた笑いになってしまった。……失敗だ。
と、不穏な空気が流れると同時、女の叫び声が空間にこだました。
「ってかさ、アタシら行方不明者の救出に来たんじゃん! そのセレネーって人かも。行こ!」
アンギルダンとゼネテスは顔を見合わせ頷き合うと、駆け出したジルの後を追うようにして走り出す。

ふと、アンギルダンは振り返り、例の柱をちらりと見やる。
(セレネー? どこかで……。)
そんな思いがついと浮かぶが、自分を呼ぶゼネテスの声に我にかえると、再び後を追って大地を蹴った。

悲鳴を追って行き着いた先は、城塞都市跡最深部。
ジルは魔物に襲われている女性に目をやった。
華奢な体躯に、腰の長さまである赤い髪、翡翠の瞳。捜索依頼が出ていたセレネーに間違いはないだろう。
ジルは腰にさしていた予備のナイフを手に取ると、魔物に向かって投げつけた。
ナイフはリッチの背中に突き刺さり、魔物はこちらに振り向いた。
「ジル!」
ゼネテスとアンギルダンが駆けつけた。これで、負ける要素は何もない。
「二人ともおっそー。んじゃ、スペルブロックかけるから後はよろしくぅ」
詠唱に入るジル。リッチは高度な全体攻撃魔法を使ってくるため、呪文相殺魔法を唱える事にしている。魔法にさえ気をつければ、この魔物は何も怖れることはない。
ジルの援護で、アンギルダンとゼネテスは勢い良く地を蹴った。
ゼネテスがタワーブレイブで先制し、アンギルダンが隙をつく。
赤い巨星の名は伊達ではない。愛用の斧を振り上げて、魔物を一撃で粉砕、撃破した。
「やるねえ、とっつぁん」
「まだまだ若いもんには負けんわい!」
ゼネテスの言葉に、アンギルダンは豪快に笑ってみせる。
「ええ、とっても素敵でしたわ!」
「……ん?」
いつもであればこれはジルのセリフだが、彼女が放ったものではなかったらしい。
見ると、助けた女性がアンギルダンに駆け寄って、熱い視線を向けている。
「えと、セレネーさん?」
「はい」
ジルの言葉に女性が振り向く。どうやらセレネーで間違いないらしい。が、今はそんなことはどうでも良い。
(私のお爺ちゃんにイチャイチャと!)
実際アンギルダンは困ってしまっているのだが、ジルには若いキレイな女性に言い寄られてまんざらでもないアンギルダン、という構図に見えているらしい。
「ま、良いじゃないか。お前さんにゃ、俺が居るだろ?」
「あはっ! あっりがとー!」
次の瞬間――豪快な音をたて、城塞都市跡の柱が一本崩れた。
――怒っている。それも、凄まじく。
これはそっとしておくのが賢明だ。ゼネテスはやれやれとため息をつく。
(そういや、この柱もぶっ壊れてたな……。)

乗りかかった船、ということで一行はセレネーを彼女の村まで送っていくことになった。
ロストールからエンシャント方面へ2日行ったところにその村はあるらしい。ディンガル最南端の町という。
(ルマリス村? 聞いたことないな。)
しかし本当に時を遡ってしまったのだとしたら、昔はそういう名の小さな村があったのかもしれない。
(それに……。)
「アンギルダン様、お髭が渋くてお素敵ですわ」
「セレネー殿……その、何というか……」
「くっつきすぎだよねー、二人とも!」
前方で繰り広げられている愛憎劇に目をやって、ゼネテスは小さくかぶりを振った。
どうやら、気にしているのは自分だけらしい。
(ま・面白いことには変わりない。)
スリル中毒極まれリ。彼もまた、足取り軽く歩き出す。

どれくらい経っただろうか。
ジルは歩調を弱め、ゼネテスの横に移動した。
「ね、気付いた?」
「……付けられてるな」
2人――いや、3人か。セレネーの身の安全はアンギルダンに任せる事にして、後ろの奴らはふたりでさっさと片付けよう。そう目配せする。
アンギルダンが歩みを止めた。ジルとゼネテスも足を止め、振り返る。
「かくれんぼの時間は終わりだよー。それともムリヤリ捜して欲しい?」
ジルの声に、3人の男たちが姿を現す。見たところ、ならず者たちのようだ。
「怪我したくなかったら、そこの女を置いていけ」
「あはっ、よくあるセリフ! おとといきやがれってカンジだよねー」
「何を!」
逆上したならず者たちがジルに向かって飛び掛かる。
挑発に乗ってくる奴らは大抵弱い。
彼らもまた例に漏れず、ジルにこてんぱんにされたのだった。

「……誰に頼まれた?」
問うゼネテスにリーダーの男は賢明に首を横に振る。
「お、俺たちはただ金を積まれて!」
「もう一度だけ聞く。誰に頼まれたんだ」
こういう時のゼネテスは容赦ない。次に答えなければ間違いなくあの男の首は飛ぶだろう。
だが男の口から依頼主の名前が出た瞬間、さすがの彼も表情を凍りつかせた。
「アロイス・クラナッハ……?」
ならず者たちを解放した後、尚もまだ考え込んでいるゼネテスにジルは声をかける事にした。
「アロイス・クラナッハ? 誰それ?」
「クラナッハはロストールの有力貴族の名前だよ」
「聞いたことない」
「お前さんがリューガ家に入る前には、断絶されてる」
「断絶?」
「クラナッハ家は先王の側近だったからな。王がセルモノーになったと同時に断絶されたよ」
その言葉に反応したのはアンギルダンだ。
「と、いうことはじゃぞ? セレネー殿を狙ったのは……」
一呼吸間を置いた後、ゼネテスは頷いた。

「先代ロストール国王・フェロヒアだ」



(続)





拍手

PR
Comment
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字