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2025年05月06日
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SSS(愚/痴/外/来/ 宇→田)
2011年08月31日
※別ジャンル注意。
ドラマ設定の宇佐見×田口ですが、グッチー女体化(名前は映画版より拝借)。
ドラマ版ウサちゃんに滾りすぎてヤヴァイです……。
ドラマ設定の宇佐見×田口ですが、グッチー女体化(名前は映画版より拝借)。
ドラマ版ウサちゃんに滾りすぎてヤヴァイです……。
不思議な人だ。
濁りのない清流のような心根は、機械のような自分の心をいとも簡単に崩してしまった。
ふわりと微笑むその顔は、きらきらと輝く光のようで。
闇の中で佇む私には、月輪のように美しい。
――触れたい。
そう願う事は、許されますか。
「は? ……え?」
口に付けていたカップを離し、しかし両手に持ったまま、田口公子は驚きに瞳を瞬く。
真摯に向けられるのは黒曜石のような、宇佐見の瞳。
「ふ、触れたいって……」
診察を終えた不定愁訴外来に、二人以外の姿はない。立ち位置は患者と医者のそれであっても、一歩踏み出せば容易に重なる。
今に限って、白鳥は近くに居ない。……いや、だからこその宇佐見の言動かもしれないが。
冗談ですよね、と、流すべきかと逡巡するが、宇佐見に限ってそれはない。また、すべきではないとかぶりを振った。
「宇佐見警視のお気持ちは嬉しいです。ですが……」
「想う方がおありですか?」
「いいえ。ただ、知り合ったばかりですし」
実際、宇佐見の事は良く知らない。
知っているのは、自分より年が2つ下だという事と、彼の官僚としての立場くらいだ。
(だけど……。)
ふいに見せる瞳の陰りは、終わりの見えない闇にも思える。
入り込んだら最後、永遠に外へは出られない。
「田口先生」
つと、宇佐見が田口の名前を呼んだ。
そのまま請うようにこちらに向かって伸ばされるのは、男らしく無骨な手。
――――駄目だ。咄嗟に思う。
「う、宇佐見警視!」
焦りを含んだその声に、触れそうだった宇佐見の右手がぴたりと止まった。
「えっと、こ、こういうのはやっぱり、その、順を踏んだ方が良いと思うんです、私!」
ああ、私、きっと顔が真っ赤だ。
30にもなって何を言っているのかと自分でも思ってしまうが、宇佐見は笑うでもなく、ただただ次の言葉を待っている。
落ち着け、と、ひとつ大きく息を吐く。コーヒーカップを机に置くと、宇佐見の止まったままの手を取った。
「考える時間を下さい。出会いはこんな形でしたけど、先の事は分かりませんし……」
仇同士のような二人の立場。
けれど、他の何かになれる可能性だってあるはずだから。
「私はいつでもここにいますよ、宇佐見警視」
捕まったのはどちらの方か。
濁りきった心の水を、一滴の清らかな水が浄化する。
常は獰猛な獣のような宇佐見の瞳が、ほんの少し――和らいだ。
2011.08.31
濁りのない清流のような心根は、機械のような自分の心をいとも簡単に崩してしまった。
ふわりと微笑むその顔は、きらきらと輝く光のようで。
闇の中で佇む私には、月輪のように美しい。
――触れたい。
そう願う事は、許されますか。
「は? ……え?」
口に付けていたカップを離し、しかし両手に持ったまま、田口公子は驚きに瞳を瞬く。
真摯に向けられるのは黒曜石のような、宇佐見の瞳。
「ふ、触れたいって……」
診察を終えた不定愁訴外来に、二人以外の姿はない。立ち位置は患者と医者のそれであっても、一歩踏み出せば容易に重なる。
今に限って、白鳥は近くに居ない。……いや、だからこその宇佐見の言動かもしれないが。
冗談ですよね、と、流すべきかと逡巡するが、宇佐見に限ってそれはない。また、すべきではないとかぶりを振った。
「宇佐見警視のお気持ちは嬉しいです。ですが……」
「想う方がおありですか?」
「いいえ。ただ、知り合ったばかりですし」
実際、宇佐見の事は良く知らない。
知っているのは、自分より年が2つ下だという事と、彼の官僚としての立場くらいだ。
(だけど……。)
ふいに見せる瞳の陰りは、終わりの見えない闇にも思える。
入り込んだら最後、永遠に外へは出られない。
「田口先生」
つと、宇佐見が田口の名前を呼んだ。
そのまま請うようにこちらに向かって伸ばされるのは、男らしく無骨な手。
――――駄目だ。咄嗟に思う。
「う、宇佐見警視!」
焦りを含んだその声に、触れそうだった宇佐見の右手がぴたりと止まった。
「えっと、こ、こういうのはやっぱり、その、順を踏んだ方が良いと思うんです、私!」
ああ、私、きっと顔が真っ赤だ。
30にもなって何を言っているのかと自分でも思ってしまうが、宇佐見は笑うでもなく、ただただ次の言葉を待っている。
落ち着け、と、ひとつ大きく息を吐く。コーヒーカップを机に置くと、宇佐見の止まったままの手を取った。
「考える時間を下さい。出会いはこんな形でしたけど、先の事は分かりませんし……」
仇同士のような二人の立場。
けれど、他の何かになれる可能性だってあるはずだから。
「私はいつでもここにいますよ、宇佐見警視」
捕まったのはどちらの方か。
濁りきった心の水を、一滴の清らかな水が浄化する。
常は獰猛な獣のような宇佐見の瞳が、ほんの少し――和らいだ。
2011.08.31
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