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2025年05月06日
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SS(if…八幡主+α)
2012年12月14日
すごーく間が開いてしまいましたが、前回の続きです^^
不在の間の拍手・メールのお返事がなかなか出来なくてすみません;;
後日まとめてお返しさせて頂きます……!
ほんと皆様ありがとうございます……っ><
不在の間の拍手・メールのお返事がなかなか出来なくてすみません;;
後日まとめてお返しさせて頂きます……!
ほんと皆様ありがとうございます……っ><
――人殺し。
投げつけられた言葉に、周囲が凍り付いたように固まった。
■Where did you learn that? 3■
タマキの校内での人気は高く、彼女の無事を喜ぶ者は多かった。
妙なワニを連れている事には最初こそ抵抗があったものの、概ねすんなり受け入れられた。曰く、“タマキだから不思議じゃないか”。
「で、八幡どこ?」
一通りの歓迎を受けた後で、タマキは言った。
相変わらずの彼女の様子に、周囲は苦笑するばかり。
「アイツなら電算室で佐藤と何かやってるぜ」
「何かって?」
「さァ……。転移プログラムがどうとかってよ」
チャーリーの答えを聞くなり、タマキの表情が輝き出した。
プログラム云々はどうだって良い。
ただ、あの人に会えるという高揚感だけが沸き上がる。
一刻も早く駆け出して――、
「人殺し!」
声が聞こえたのは、その時だった。
自分に向けられた事とは思わずに振り向くが、強い視線に息を飲む。
――赤根沢玲子。
面識はほとんどないが、優等生なお嬢様のイメージが強かった彼女であるから、憎しみを向けてくるのを意外に思った。
それはタマキ以外の人間も同様らしく、レイコの動きを見守るだけだ。
レイコはタマキを睨んだままで、一歩、前へと踏み出した。
「どうしてイデオを殺したの! 他にも方法はあったはずでしょう!?」
自分の正論を信じて疑わないような口調――否、正論なのだ。
ただ、タマキはその時自分に出来る最大限の事をした。そう信じている。
(信じなければ、どうしようもない。)
ここに居る全員は、イデオの魔神皇となった姿を知らない。せいぜい、アストラル体の彼を見ただけだろう。
悪魔ではない。人間と人間ならば、話し合いという手も使えたのでは? そう考えるのが心情だ。イデオが居なくなった事で現実に帰る手段が不明になったとあるなら、尚更に。
「そうだよな……」
誰かが言った。「殺さなくても……」
そうなると人間というのは勝手なもので、今度はイデオの庇護に回り始めた。
タマキが糾弾されそうな空気の中で、異を唱えたのはタマキの親友のユミである。
「バカ言ってんじゃないよ。タマキはアタシらを狭間のヤツから助けてくれたんじゃないか。まさか、狭間が何をしたか、ここで何があったか……忘れたワケじゃないだろう!?」
ユミにしてみれば、タマキが責められる事に我慢がならなかっただけの話なのだが、彼女の真意とは裏腹に別の誰かが引き継ぐように言葉を吐いた。
「私……、彼氏が悪魔に食べられるとこ、見た……」
その光景は凄惨で、忘れようにも記憶にこびりついて離れない。
「助けてって、死にたくないって……叫び声……ボリボリって、骨……砕かれて……」
「俺もゾンビになったダチ見たぜ。インターハイ行くんだっつって、スゲー頑張ってたのに、あんな事……」
「自分でやれるなら、私が狭間を殺してた!」
誰かの死を経験している人間は、恐怖と怒りに身を震わせる。
タマキを責めるのは、そうでない人間たちだ。
狭間を許すべきだった。
狭間を殺すべきだった。
平行線をたどる言葉の羅列は遥か上空を虚しく滑る。
「人間面倒臭ぇー」
呆れたように息を吐いたセベクは、ずっと黙ったままのタマキに漸く気づいて首を傾げた。
「反論ナシか? お前が何も言わねぇって珍しい事があるもんだ」
振り返るでもなく、返答を述べるでもない。タマキは黙ってじっと級友たちを見守るだけだ。
「黒井。アンタは一体どっち派なのさ」
「オレ? オレはどっちでもねえなー。元の世界に帰れりゃOK。そういうユミはどうなんだ?」
「アタシは……」
言葉を切って、タマキを見やる。
久方ぶりに会った親友は、見違える程に逞しくなっていた。
地獄の中を駆け抜けて、かつての級友を手にかけた。
何が正しくて、正しく無いか。そんな事はどうだって構わない。
「タマキがツラいのが、ツラいねぇ……」
けれど、どう声をかけてやれば良いのか分からない。
せめて……と、この無意味な争いを止めさせようとした時だった。
「あっれー? タマキ?」
全ての空気をぶち壊すような暢気な声がゆるりと響いた。
けれど本人は驚きに目を丸くして、突如現れた少女をじっと見つめたままだ。
「八幡……?」
顔を上げたタマキの方も目を瞠り、男の姿を瞳に映す。
下ろしたてだと言ってたスーツは汚れて草臥れ、ブランドものの靴もボロボロだ。
つけたままのネクタイは、去年の誕生日にこっそりプレゼントしたもので――。
「え。何、ホントにタマキ? ホントにホント?」
自分で呼んだくせに驚いたのか、更に目を丸くしてタマキの名前を連呼する。
周囲の空気が固まるより先、動いたのはタマキの足だ。
「八幡!」
「おわっふ!?」
いきなり抱きつかれることは初めてではなかったが、思っていたより遥かに強い衝撃だった。
妙な悲鳴を上げてしまった八幡だったが、それをかきけす程の大きな声が響き渡った。
「八幡!」
「えっ、う、うん」
「八幡……」
「うん。……僕だよ」
確かめるような名前の連呼に、八幡はようやく頷いた。
しがみつくタマキの肩に手をふれて、「うん」ともう一度頷いて。
「お帰り、タマキ」
愛しい人にようやく会えた。
ノモスの辛い道のりに耐えられたのも、絶対会えると信じていたから。
「や、はた……っ、」
「うん?」
「ただいま……っ!」
“大切な人が生きている。”
今まで当たり前だと思っていた事が心に響く。
冷やかす者など、もはや誰も居なかった。
投げつけられた言葉に、周囲が凍り付いたように固まった。
■Where did you learn that? 3■
タマキの校内での人気は高く、彼女の無事を喜ぶ者は多かった。
妙なワニを連れている事には最初こそ抵抗があったものの、概ねすんなり受け入れられた。曰く、“タマキだから不思議じゃないか”。
「で、八幡どこ?」
一通りの歓迎を受けた後で、タマキは言った。
相変わらずの彼女の様子に、周囲は苦笑するばかり。
「アイツなら電算室で佐藤と何かやってるぜ」
「何かって?」
「さァ……。転移プログラムがどうとかってよ」
チャーリーの答えを聞くなり、タマキの表情が輝き出した。
プログラム云々はどうだって良い。
ただ、あの人に会えるという高揚感だけが沸き上がる。
一刻も早く駆け出して――、
「人殺し!」
声が聞こえたのは、その時だった。
自分に向けられた事とは思わずに振り向くが、強い視線に息を飲む。
――赤根沢玲子。
面識はほとんどないが、優等生なお嬢様のイメージが強かった彼女であるから、憎しみを向けてくるのを意外に思った。
それはタマキ以外の人間も同様らしく、レイコの動きを見守るだけだ。
レイコはタマキを睨んだままで、一歩、前へと踏み出した。
「どうしてイデオを殺したの! 他にも方法はあったはずでしょう!?」
自分の正論を信じて疑わないような口調――否、正論なのだ。
ただ、タマキはその時自分に出来る最大限の事をした。そう信じている。
(信じなければ、どうしようもない。)
ここに居る全員は、イデオの魔神皇となった姿を知らない。せいぜい、アストラル体の彼を見ただけだろう。
悪魔ではない。人間と人間ならば、話し合いという手も使えたのでは? そう考えるのが心情だ。イデオが居なくなった事で現実に帰る手段が不明になったとあるなら、尚更に。
「そうだよな……」
誰かが言った。「殺さなくても……」
そうなると人間というのは勝手なもので、今度はイデオの庇護に回り始めた。
タマキが糾弾されそうな空気の中で、異を唱えたのはタマキの親友のユミである。
「バカ言ってんじゃないよ。タマキはアタシらを狭間のヤツから助けてくれたんじゃないか。まさか、狭間が何をしたか、ここで何があったか……忘れたワケじゃないだろう!?」
ユミにしてみれば、タマキが責められる事に我慢がならなかっただけの話なのだが、彼女の真意とは裏腹に別の誰かが引き継ぐように言葉を吐いた。
「私……、彼氏が悪魔に食べられるとこ、見た……」
その光景は凄惨で、忘れようにも記憶にこびりついて離れない。
「助けてって、死にたくないって……叫び声……ボリボリって、骨……砕かれて……」
「俺もゾンビになったダチ見たぜ。インターハイ行くんだっつって、スゲー頑張ってたのに、あんな事……」
「自分でやれるなら、私が狭間を殺してた!」
誰かの死を経験している人間は、恐怖と怒りに身を震わせる。
タマキを責めるのは、そうでない人間たちだ。
狭間を許すべきだった。
狭間を殺すべきだった。
平行線をたどる言葉の羅列は遥か上空を虚しく滑る。
「人間面倒臭ぇー」
呆れたように息を吐いたセベクは、ずっと黙ったままのタマキに漸く気づいて首を傾げた。
「反論ナシか? お前が何も言わねぇって珍しい事があるもんだ」
振り返るでもなく、返答を述べるでもない。タマキは黙ってじっと級友たちを見守るだけだ。
「黒井。アンタは一体どっち派なのさ」
「オレ? オレはどっちでもねえなー。元の世界に帰れりゃOK。そういうユミはどうなんだ?」
「アタシは……」
言葉を切って、タマキを見やる。
久方ぶりに会った親友は、見違える程に逞しくなっていた。
地獄の中を駆け抜けて、かつての級友を手にかけた。
何が正しくて、正しく無いか。そんな事はどうだって構わない。
「タマキがツラいのが、ツラいねぇ……」
けれど、どう声をかけてやれば良いのか分からない。
せめて……と、この無意味な争いを止めさせようとした時だった。
「あっれー? タマキ?」
全ての空気をぶち壊すような暢気な声がゆるりと響いた。
けれど本人は驚きに目を丸くして、突如現れた少女をじっと見つめたままだ。
「八幡……?」
顔を上げたタマキの方も目を瞠り、男の姿を瞳に映す。
下ろしたてだと言ってたスーツは汚れて草臥れ、ブランドものの靴もボロボロだ。
つけたままのネクタイは、去年の誕生日にこっそりプレゼントしたもので――。
「え。何、ホントにタマキ? ホントにホント?」
自分で呼んだくせに驚いたのか、更に目を丸くしてタマキの名前を連呼する。
周囲の空気が固まるより先、動いたのはタマキの足だ。
「八幡!」
「おわっふ!?」
いきなり抱きつかれることは初めてではなかったが、思っていたより遥かに強い衝撃だった。
妙な悲鳴を上げてしまった八幡だったが、それをかきけす程の大きな声が響き渡った。
「八幡!」
「えっ、う、うん」
「八幡……」
「うん。……僕だよ」
確かめるような名前の連呼に、八幡はようやく頷いた。
しがみつくタマキの肩に手をふれて、「うん」ともう一度頷いて。
「お帰り、タマキ」
愛しい人にようやく会えた。
ノモスの辛い道のりに耐えられたのも、絶対会えると信じていたから。
「や、はた……っ、」
「うん?」
「ただいま……っ!」
“大切な人が生きている。”
今まで当たり前だと思っていた事が心に響く。
冷やかす者など、もはや誰も居なかった。
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